私たちがグループホームを作ろうとした理由 

   親兄弟がいれば幸せ、というわけではありません
  
  私は学生の頃、ある家族と出会いました。
  その家族は、おばあさんと娘さんの二人暮らしでした。娘さんは精神障害者でしたが、たいそう
  気だてがよく頭もいい人でした。他にも子供はいたのですが、娘さんが一人でおばあさんの世
  話をしていました。このおばあさんには被害妄想があり、だんだんに寝たきりになって、この娘
  さんのことを心配しながら死んでいきました。おばあさんは、二言目には本人を前にして「この子
  は頭が弱いから、おかしな事ばかり言う。」と話していました。
  そのあと遺産相続と娘さんの居場所をめぐって、兄弟間の争いが続いたと聞きます。娘さんの
  目の前で、「あんたが100万円多くもらったんだから。」「あんたが長男なんだから。」などと言い
  争い、彼女の世話を押しつけ合ったと本人から聞きました。

  お金持ちの家でしたが、この娘さんの居場所はどこにもなかったのです。
  
そのあとどうなったのかわかりません。私はただの学生で、こういった家庭問題の前には無力
  でした。私に出来たのは娘さんの話し相手になることだけでしたが、それも、私の就職と同時に
  おしまいとなりました。 
  でも、あの時感じたやりきれない思いは、きっと一生忘れないでしょう。  





   社会的入院という問題もあります

  退院したくても出来ない人たちが沢山います。
  
親が死んでいない人、身寄りすらない人がいます。
  家族がいても、退院させたがらない家庭はたくさんあります。
  家族が存在すら忘れているような状態の人もいます。
  
  でも、家族だけを責めるのも間違いだと思います。
  家族に頼らないと生きていけないのはおかしいのです。
  居場所が病院や施設しかないのもおかしいのです。
  親だって、年をとってくると自分の事で精一杯になるのは当たり前です。
  安心して行き来できる、病院とも施設とも違う場所が必要でした。     
                                          


   地域で家族のそばにいても幸せとは限りません 。 

  GH立ち上げの直接のきっかけは、ある外来患者さんの自殺でした。
  
この方は実家の離れに独りで住んでいましたが、外来受診に来ないのを心配して訪問した病
  院職員によって、自殺体となって発見されました。何日も顔を見ていないのに、隣に住んでいる
  家族は誰一人として心配してくれませんでした。実家と隣り合わせに住みながら、孤独でした。
  
  通報を受けてその場に居合わせた警官も、あまりの存在の軽さに息をのんだと聞いています。
  
  これは、悲しいことに精神科の場合、そう珍しい事ではありません。
  
でも、もう沢山でした。こんな事が当たり前だなんて何か間違っています。これ以上悲しい出来
  事を見聞きするのは嫌でした。手をこまねいているのは罪悪ですらあるように思えました。

                                 


・・・・・・・そして、院長が思い詰めたように

           「GHを作ろう!」と言いました。・・・・・・




                                     (文責 如月)